統計数理基盤

データ同化による南極氷床コア年代決定モデルの構築

【研究の経過】

南極氷床は地球上の最も大きな氷床で、その厚さは3000m以上にもなる。重力と地熱の効果により流動が生じ、上流部で涵養が起こり下流部では流出・消耗が起きている。岩盤地形も氷床表面からは想像できないほど激しい勾配をもち、地形の効果も流動の方向などに大きく影響を及ぼしている。日本のドームふじ基地はこのような氷床流動を考えると最も成層化しており、他のアイスコア掘削基地よりも優位であるとアイスレーダーを用いた観測から推測されている。

このドームふじ基地で掘削されたアイスコアには、気候変動が記録されていると考えられている。特に氷自体を形成する水の安定同位体比は気温の指標として考えられ、10万年周期で起こる氷期・間氷期サイクルなどの復元などが行われてきた(e.g., Kawamura et al. 2007)。このような気候変動の議論を行うためにも、より正確な深度ー年代軸を推定することが必要であり、これまで用いられてきた年代決定手法にデータ同化を適用し、計算コストのかからない、より正確な推定を行う手法の開発を試みている。

【研究の成果】

ここでは、1年当たりの雪の涵養量と、1年当たりの雪の伸び縮み率から年層の雪の厚さを算出し、深度方向に積分していくことで、深度に対する年代を推定するという従来の年代決定式を用いる。この式には未知変数が5つあり、観測データはアイスコアからすべてのタイムステップについて得られるΔDと、絶対年代と呼ばれる有孔虫などの年代データやアイスコアに閉じ込められた気泡に含まれるO2/N2と日射量の位相から推定された年代マーカーを用いた。

5つの変数を適当に与えて観測データによる補正をカルマンフィルタを適用させて行った年代補正の結果、2400m付近から急激に年代が変化しており、氷床上部と下部で必要なパラメーターや物理が異なる可能性が高い。このような状況にもデータ同化手法を用いれば柔軟に対応出来るため、より高精度な年代決定が可能になると確信している。

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