プレス発表の記事一覧

2021年4月8日

【Press Release】Published in EurekAlert! _2021-1(Center for Social Data Structuring)

"Japanese consumers more concerned about gene-editing of livestock than of vegetables, survey shows"
⇒ Links to published articles(EurekAlert!)

◆Links to published articles(BMC CABI Agriculture and Bioscience)◆
 Effects of information on consumer attitudes towards gene-edited foods: a comparison between livestock and vegetables

2021年4月8日

【プレスリリース】EurekAlert!に掲載されました_2021-1(社会データ構造化センター)

共同研究「ゲノム編集技術の食品への応用に関する消費者調査(野菜と家畜の場合の比較-ウェブ調査結果)」の成果がBMC CABI Agriculture and Bioscience誌に発表されました。
⇒ EurekAlert!掲載記事(英文)

◆掲載論文(英文)◆
 Effects of information on consumer attitudes towards gene-edited foods: a comparison between livestock and vegetables

2020年11月6日

【プレスリリース】大気レーダーの観測データから大気乱流を正確に導出する手法を開発(2020/11/6)

2020(令和2)年11月6日

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設
国立大学法人 東京大学大学院理学系研究科

大気レーダーの観測データから大気乱流を正確に導出する手法を開発

 国立極地研究所(所長:中村卓司)の西村耕司(にしむらこうじ)特任准教授を中心とする、データサイエンス共同利用基盤施設、東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫(さとうかおる)教授および高麗正史(こうままさし)助教、京都大学による研究グループは、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー、図1)などの大気レーダーでの観測データから、上空で発生している大気乱流の特性を正確に導くための、理論式の導出に成功しました。
 速度の分散といった大気乱流の特性は大気レーダーでの重要な観測対象ですが、これまでは大気乱流と観測データの厳密な関係式が分かっていなかったため、観測モデルを大幅に単純化することにより、近似的に乱流による速度の分散が推定されていました。
 本研究では、観測モデルの数理的な分析により、世界で初めて、乱流による速度の分散と観測データの間の関係式を厳密かつ簡潔な形で導出することに成功しました。また、この理論を用いて、観測データから正確に乱流の速度の分散を算出するアルゴリズムを構築し、さらに、数値シミュレーションによりその推定精度が非常に高いことを示しました。本成果は学術誌IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensingに掲載されました。

図1: PANSYレーダー

【研究の背景】

 1045本のアンテナからなる南極昭和基地大型大気レーダー(Program of the Antarctic Syowa MST/IS Radar; PANSYレーダー)は、2015年の本格稼働以来、昭和基地の上空約100kmまでの風向、風速、温度などを常時測定し、極域の大気の流れや大気波動の研究に貢献しています。
 地球におけるエネルギー収支は地球が受ける太陽放射と地球が宇宙に放出する赤外放射がバランスしています。太陽から受け取るエネルギーは緯度によって大きく異なりますが、大気や海洋の流れにより再分配することで地球は安定な環境が保たれています。このエネルギーの再分配に寄与する大気の流れには積雲対流や様々なスケールの大気波動、台風、温帯低気圧などの組織化した現象、赤道と極域、あるいは、両極をつなぐ大循環など様々な形態がありますが、エネルギーの流れの最終形は、大気乱流に伴う運動エネルギー散逸で生まれる熱です。したがって、大気乱流(向きや速度が不規則に変化する小規模な流れ)の特性(速度のばらつき等)を正確に測定し、乱流による大気の力学的なエネルギー散逸を求めることは重要な課題です。
 PANSYレーダーをはじめとする大気レーダーは、地上のアンテナから電波ビームを発し、大気によって反射された電波を受信することで、上空の観測を行います。しかし、発射される電波ビームには広がりがあり、かつ、大気は上空で移動していることから、観測される風速には、平均的に近づく、あるいは遠ざかる相対速度が加わります(図2)。大気レーダーによる風速の観測データにはこの相対速度による見かけの加減速と、乱流による分散の両方の成分が含まれており、乱流による分散のみを直接観測することはできません。さらに、大気乱流の速度の分散と、観測される信号の間の厳密な関係が分かっていなかったため、実際よりも単純な近似モデルによって観測データから乱流による速度の分散を推定するしかなく、正確に算出されているかが不明でした。しかも、この手法では、PANSYレーダーのように複雑なビーム形状を持つ大気レーダーにおいては、近似的な乱流特性の算出でさえ困難でした。

                               
                               図2:大気乱流と観測データの関係。
左:乱流による観測データの模式図。乱流によって速度の観測値がある程度分散するが、そのばらつきが乱流速度の分布を示している。仮に理想的に乱流のみを測定できた場合には、このようなグラフになる。
中~右:実際のレーダーでは電波ビームに幅があるため、風の平均の速度による見かけの分散が発生し、この分散と真の乱流速度分散とが加算された形で観測される。一般に、見かけ上の分散は真の分散に比べて大きい値となり、正確な風速の分散を求めるためには、この見かけの分散を正確に求めることが必要となるが、これまでは不可能であった。
               
【研究の内容】

 乱流による速度の分散とレーダーでの観測値の厳密な関係については、従来、極めて複雑な方程式で表されることが知られていましたが、この式では、コンピュータを用いても実用的に解くことができませんでした。本本研究で西村特任准教授らは、乱流の物理的、統計的特性を考慮することにより、極めて複雑であった乱流特性と観測値をつなぐ、端的かつシンプルな関係式が得られることを見出し、その導出に世界で初めて成功しました。得られた厳密な理論式により、観測データから乱流による速度分散を正確に計算することが可能になりました。さらに、レーダーシステムの構成、例えば非対称なアンテナ配置などにより、これまで知られていなかった推定バイアスが発生することなども明らかになりました。
 また、本研究で証明した理論関係式を解く計算アルゴリズムを構築し、これまで困難であった乱流による速度分散の正確な推定が可能となることを数値シミュレーションにより示しました。

【今後の展望】

 乱流の強さが高い精度で測定できるようになったことにより、乱流による大気の力学的エネルギー散逸を、大気レーダーで正確に推定することが可能になりました。これにより、地球の大気大循環に関わるエネルギー収支の研究が加速することが期待されます。
 また、本研究で示された乱流散乱の数学的理論は、あらゆる大気観測用レーダーに適応可能であることから、例えば気象予測などに用いられるレーダーにおいても精度の向上が期待されます。

【発表論文】

 掲載誌:IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, October 2020
 タイトル:“Spectral Observation Theory and Beam De-Broadening Algorithm for Atmospheric Radar”
 著者:西村 耕司(情報・システム研究機構 国立極地研究所 特任准教授、
          情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 特任准教授、
          総合研究大学院大学 複合科学研究科 極域科学専攻 准教授)
    高麗 正史(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 助教)
    佐藤 薫(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 教授)
    佐藤 亨(京都大学国際高等教育院 特定教授)
 DOI:10.1109/TGRS.2020.2970200
 URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/9047136

【研究サポート】

 本研究は、JST CREST JPMJCR1663、JSPS科研費JP17H02969、JP18H01276の支援を受けて実施されました。


◆関連リンク◆

情報・システム研究機構 国立極地研究所 プレスリリース
東京大学大学院理学系研究科 プレスリリース


◆お問合せ先◆

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立極地研究所 広報室
TEL: 042-512-0655 E-mail: kofositu@nipr.ac.jp

2020年3月12日

【プレスリリース】低酸素環境下乳がんの浸潤転移を促進する分子を発見(DBCLS)

広島大学との共同研究の成果が、英国オックスフォード大学出版局科学誌「Carcinogenesis」に掲載されました。

プレスリリース(PDF)

◆掲載論文(Abstract,英文)◆
 "GLIS1, a novel hypoxia-inducible transcription factor, promotes breast cancer cell motility via activation of WNT5A."

※関連リンク:DBCLSサイトの記事

2020年1月24日

【プレスリリース】EurekAlert!に掲載されました(社会データ構造化センター)

共同研究「ゲノム編集技術の農作物への適用に関する意識調査(専門家と一般市民との統計的比較)」の成果がPalgrave Communications誌に発表されました。
⇒ EurekAlert!掲載記事(英文)

◆掲載論文(英文)◆
 Expert and public perceptions of gene-edited crops: attitude changes in relation to scientific knowledge

2020年1月24日

【Press Release】Published in EurekAlert! (Center for Social Data Structuring)

"New survey results reveal the experts and public's attitude towards gene-edited crops"
⇒ Links to published articles(EurekAlert!)

◆Links to published articles(Nature/Palgrave Communications)◆
  Expert and public perceptions of gene-edited crops: attitude changes in relation to scientific knowledge

2019年12月2日

【プレスリリース】オーロラを発生させる高エネルギー電子が大気圏に降り注ぐしくみを解明(2019/12/2)

令和元年12月2日

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
国立大学法人 金沢大学
国立大学法人 名古屋大学
国立大学法人 東京大学大学院理学系研究科
国立大学法人 東北大学
国立大学法人 電気通信大学
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設

オーロラを発生させる高エネルギー電子が大気圏に降り注ぐ仕組みを解明
~成層圏オゾンの破壊を誘発する原因の謎解きが一歩前進~

 国立極地研究所(所長:中村卓司)の田中良昌(たなかよしまさ)特任准教授、西山尚典助教、門倉昭教授を中心とする、金沢大学、名古屋大学宇宙地球環境研究所、東京大学、東北大学、JAXA 宇宙科学研究所、電気通信大学などの研究グループは、地上と衛星の同時観測により、地球周辺の宇宙空間で生まれる電磁波が原因となって、南極、北極の上空の深く、すなわち成層圏近くまで高エネルギーの電子が降り注いできていることを世界で初めて明らかにしました。成層圏のオゾンの破壊を誘発すると考えられている高エネルギー電子がどのように極域大気に降り込んでくるのか、そのしくみの解明を一歩進めた成果です。
 オーロラは、高度約100~300kmにおける大気の発光現象であり、地球周辺の宇宙空間から磁力線に沿って降り込んでくる数十キロ電子ボルト(keV(注1))以下のエネルギーを持つ電子が極域大気の原子や分子に衝突することによって発生します。さらに高い数百keV以上のエネルギーを持つ電子は、より地上に近い「中間圏(注2)」と呼ばれる高度約50~90kmの大気層まで侵入し、その組成を変化させ、中間圏のすぐ下にある成層圏のオゾン破壊の要因となると考えられています。
 本研究グループは、地球周辺の放射線環境を調査する科学衛星「あらせ」により電磁波を、南極、北極に設置された大型大気レーダー「PANSY(注3)」、「MAARSY(注4)」により大気の電離を、同時に観測しました。その結果、「あらせ」が宇宙空間で電磁波を観測した同時刻に、南北両極では大気レーダーが上空55~80kmからの強い反射エコーを捉えました。これは、宇宙空間で生じた電磁波が、オーロラを光らせるエネルギー数十keV以下の電子だけでなく、より高いエネルギー(数百~数千keV)の電子を南極、北極の上空深くまで降り込ませたことを示しています。

【研究の背景】

 北極や南極の空を美しく彩るオーロラは、高度約100~300kmに現れる大気の発光現象であり、地球の周りの宇宙空間から磁力線に沿って大気圏に降り込んでくるエネルギー約0.1~数十キロ電子ボルト(keV)の電子が極域大気に衝突することによって発生します。さらに高い数百keV以上のエネルギーを持つ電子は、中間圏と呼ばれる高度約50~80kmまで侵入し、窒素酸化物(NOx)や水素酸化物(HOx)などの分子を増加させます。これらの分子は、中間圏のオゾンを破壊すると共に、下降流にのって高度約10~50kmの成層圏まで運ばれ、オゾン層破壊を誘発すると考えられています。また、オゾン層は大気の熱バランスを保つ働きをしているため、高エネルギー電子降り込みによるオゾン層の減少が地球規模の気候変動に影響を与える可能性も指摘されています。そのため、高エネルギー電子の降り込みがいつ、どこで、どのように起こるのかを明らかにするため、国際的な連携による研究が精力的に行われています。
 これまでの研究により、宇宙空間で生じるいくつかの電磁波が高エネルギー電子と相互作用し、電子を散乱して極域大気に降り込ませることがわかっています。例えば、「コーラス(注5)」と呼ばれる周波数が数kHzの電磁波は、エネルギー数十keVの電子と共鳴し、数秒周期で明滅を繰り返す「脈動オーロラ」を引き起こします。また、数Hzの周波数帯の「電磁イオンサイクロトロン波(注6)」は、数百~数千keV前後の高エネルギー電子の降り込みの原因となります。しかし、地上と衛星の同時観測によって宇宙空間の電磁波と極域中間圏の応答を直接比較した研究は、これまで行われていませんでした。

【研究の内容】

 本研究グループは、地球周辺の放射線環境を調査する科学衛星「あらせ」(2016年12月打ち上げ)と、昭和基地(南緯69.00°, 東経39.58°)に設置された南極最大の大気レーダー「PANSY」(Program of the Antarctic Syowa MST/IS radar、図1)、並びに、PANSYと似た緯度経度(北緯69.30°, 東経16.04°)にある北極の大気レーダー「MAARSY」(The Middle Atmosphere Alomar Radar System)による同時観測を実施しました。両レーダーとも、上空に向けて強力な電波を発射し、大気中で散乱され戻ってきたわずかな電波(反射エコー)を検出することで、大気の動き(風)や、電子密度を観測します。本研究では、反射エコーから電子密度の増加、つまり大気層への高エネルギー電子降り込みを検出しました。
 宇宙と地上での観測の結果、「あらせ」が宇宙空間で観測した電磁波と、南北両半球の大気レーダーが捉えた上空55~80kmからの強い反射エコー、つまり高エネルギー電子の降り込みが、同時に発生し、良く似た時間変動をしていることを明らかにしました(図2、図3)。同時刻に、北極のアイスランドでは、脈動オーロラが観測されていました(動画1)。これらの現象の良い相関は、宇宙空間で生じた電磁波が、北極でオーロラを発生させた数十keV以下のエネルギーの電子だけでなく、はるかに高いエネルギー(数百~数千keV)の電子を南北両極の上空深くまで降り込ませ、大気を電離した証拠です。
 これらの現象は、太陽から吹いている高速太陽風の前面が地球に到達した直後に、明け方の時間帯で発生しました。高速太陽風の到来は、(1)地球周辺の地磁気の圧縮、(2)オーロラ爆発、をもたらしました(図4)。(1)は電磁イオンサイクロトロン波を成長させ、(2)は宇宙空間夜側から熱い電子を朝側に運び、コーラスを発生させたと考えられます。これらの電磁波が宇宙空間に存在する高エネルギー電子と相互作用して、南北両極の大気に電子を落とし、上層で脈動オーロラ、下層で中間圏の大気電離を引き起こしたことが明らかになりました。

【今後の展望】

 数百keV以上の高エネルギー電子の地球大気への降り込みは、これまでは激しいオーロラ爆発が頻発する磁気嵐と呼ばれる大規模なイベントのときに発生すると考えられてきました。しかし、本研究は、高速太陽風の到来や単発のオーロラ爆発といった比較的小規模なイベントのときにも、高エネルギー電子が極域中間圏まで降り込んでいることを明らかにしました。特に、オーロラ爆発は、平均して1日に数回と頻繁に発生するため、地球の大気に大きなインパクトを与える可能性があります。今後、小規模なオーロラ現象が、どのくらい高エネルギー電子を降り込ませ、地球の気候変動に影響を与えるのか、定量的に調査することが重要です。

図1:南極昭和基地の大型大気レーダー「PANSY」のアンテナ群 図2:あらせ衛星で観測された地球周辺の宇宙空間の電磁波と、南北極域の大型大気レーダーPANSY、MAARSYで観測された中間圏エコー
(2017年3月21日02~07時)
図3:
(a) あらせ衛星が観測した電磁波の強度の時間変化
(b) PANSY、MAARSYレーダーが観測した中間圏エコーの強度の時間変化
図4:高エネルギー電子が大気へ降り込む過程のイメージ

 

【掲載論文】

 “Direct comparison between magnetospheric plasma waves and polar mesosphere winter echoes in both hemispheres”
 Journal of Geophysical Research – Space Physics


◆研究に関する問い合わせ◆

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立極地研究所 宙空圏研究グループ 特任准教授
田中良昌(たなかよしまさ)
TEL:042-512-9036

◆報道に関する問い合わせ◆

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立極地研究所 広報室
TEL: 042-512-0655 E-mail: kofositu@nipr.ac.jp

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
本部広報室
TEL:03-6402-6214 E-mail:koho@rois.ac.jp


【注】

注1:電子ボルト
エネルギーの単位でeVと表される。1電子ボルトは1個の電子が1ボルトの電位差で加速されるときのエネルギー。1keV=1000eV。

注2:中間圏
地球の大気の層の一つで、高度約50~90kmに位置する。その下の高度約10~50kmには、オゾン層を含む成層圏がある。

注3:PANSY
昭和基地(南緯69.00˚, 東経39.58˚)に建設された、南極最大の大気レーダー。1045本のアンテナで構成される。上空に向けて強力な電波を発射し、大気中で散乱され戻ってきたわずかな電波(反射エコー)を検出することで、上空500kmまでの大気の風速や電子密度等を観測する。

注4:MAARSY
北極のノルウェー・アンドーヤ(北緯69.30˚, 東経16.04˚)に設置された大型大気レーダー。433本のアンテナから成る。PANSYレーダーと同様の大気観測を行っている。

注5:コーラス
宇宙空間に存在する電磁波の一種で、磁力線に沿った電子のらせん運動を伴う。音声に変換すると鳥のさえずりのように聞こえることから、コーラスと呼ばれる。

注6:電磁イオンサイクロトロン波
宇宙空間に存在する電磁波の一種で、磁力線に沿ったイオンのらせん運動を伴う。

2019年10月28日

【プレスリリース】「昆虫は活性酸素を上手に利用する」(2019/10/28)

令和元年10月28日

昆虫は活性酸素を上手に利用する ~蛹(さなぎ)になるために活性酸素を利用する仕組みを発見~

 国立大学法人東京農工大学大学院連合農学研究科 野島陽水(大学院博士課程修了生)と農学研究院生物生産科学部門 天竺桂弘子准教授、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設ライフサイエンス統合データベースセンターの坊農秀雅特任准教授を中心とする研究グループは、チョウ目に属する昆虫が強いストレスに対峙した場合に、蛹化が早まる現象の分子メカニズムの一端を解明しました。
 チョウ目昆虫であるカイコ (Bombyx mori)は、蛹期に幼虫の体を成虫の体へ“つくりかえる”ために幼虫の体を一旦溶かし、成虫の体をつくります。このプロセスにおいて、カイコは蛹になる前にわざと体内の活性酸素の量を増加させることが明らかになりました。すべての生物に対して悪者であると定義されてきた活性酸素をカイコは蛹になる時に上手に利用していたのです。この成果は昆虫の蛹化の分子メカニズムの解明に役立つだけでなく、昆虫が様々な環境下で生存できる能力を獲得できた理由の解明にも繋がることが期待されます。

 本研究成果は、Scientific Reports(10月11日付)に掲載されました。
 URL:www.nature.com/articles/s41598-019-51163-3


【現状】

 チョウ目昆虫であるカイコガ(Bombyx mori)は、蛹期に幼虫の体を成虫の体へ“つくりかえる”ために幼若ホルモンと脱皮ホルモン・エクダイソンの体液中濃度を変化させ、蛹化のためのスイッチをオンにします。蛹期では体液中へのエクダイソンの分泌に伴って、まず細胞内においてプログラム細胞死の1つであるオートファジーが、続いてアポトーシスが誘導され、自己融解した幼虫組織から材料を得て成虫組織を再構築し、変態します。チョウ目昆虫では紫外線の照射や、飢餓などの強いストレスが幼虫の時期に加わると早期に蛹になることが知られていましたが、その分子メカニズムはよくわかっていませんでした。

【研究体制】

 本研究は東京農工大学および、情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設ライフサイエンス統合データベースセンターで実施されました。

【研究成果】

 本研究チームはまず、紫外線が照射された際と、蛹化の際に、共通の遺伝子発現変動が起こるのではないか、と仮説を立てました。そこで、公開されている遺伝子発現データベースの紫外線照射と蛹化に関するカイコのデータから、共通した発現変動を示す遺伝子群を探索した結果、活性酸素の発生に関与するシグナル経路を発見しました。
 次に、Superoxide dismutase(SOD)の一種である、SOD1とSOD2タンパク質に注目しました。SODは生物がストレスを受けた際に生じる活性酸素を除去する酵素です。カイコの発育過程においてSOD1およびSOD2タンパク質の挙動を観察すると、幼虫から蛹に変化する前にSOD1とSOD2タンパク質の発現が顕著に低下し、その後蛹化が終わると、発現量は回復しました。また、カイコ体内の活性酸素の量を測定すると、蛹化前に増加することが分かりました。そこで、エクダイソンと活性酸素、SOD1とSOD2の関係を調べてみると、エクダイソンによりSODの発現は低下し、活性酸素の量が増加しました。このことから、エクダイソンというスイッチにより活性酸素が増加することで、オートファジーとアポトーシスが誘導され蛹化できると考えられたのです。そこで、蛹化前にカイコ体内のSODの量を増やすために、SODと同じ機能を持つ化合物(SODミミック)をカイコに注射したところ、カイコは蛹化できなくなりました。このことから、カイコが蛹化するためには、SODの発現を低下させ、体内の活性酸素の量を増やす必要があることが分かりました(図1)。

【今後の展開】

 昆虫が組織を融かして体を再構成する奇妙な現象には多くの者が魅了され、現在でもその分子機構を明らかにするために多くの研究が行われています。本研究が更に進展すれば、昆虫が諸刃の剣である活性酸素を蛹化開始の分子機構に組み込み、進化・繁栄してきた理由に迫ることができます。本研究チームが発見した活性酸素を利用する蛹化の分子メカニズムは、昆虫の環境適応戦略の仕組みの解明の一端に役立つことが期待されます。

【掲載論文】

 Nojima Y, Bono H, Yokoyama T, Iwabuchi K, Sato R, Arai K, and Tabunoki H. “Superoxide dismutase down-regulation and the oxidative stress is required to initiate pupation in Bombyx mori” Sci.Rep. 2019


◆研究に関する問い合わせ◆

東京農工大学 大学院農学研究院
生物生産科学部門 准教授
 天竺桂 弘子(たぶのき ひろこ)
TEL/FAX:042-367-5613 E-mail:h_tabuno@cc.tuat.ac.jp

◆報道に関する問い合わせ◆

東京農工大学 企画課広報係
TEL:042-367-5895 E-mail:koho2@cc.tuat.ac.jp
東京農工大学プレス発表

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
本部広報室
TEL:03-6402-6214 E-mail:koho@rois.ac.jp

DS施設DBCLSニュースページ


2019年9月13日

【プレスリリース】「日本文化とAIシンポジウム2019」開催ならびに参加申込受付開始のお知らせ(2019/09/13)

令和元年9月13日

「日本文化とAIシンポジウム2019 ~AIがくずし字を読む時代がやってきた~」
 11月11日に開催、参加申込スタート

情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設(以下、ROIS-DS) 人文学オープンデータ共同利用センター(センター長:北本朝展)ならびに同機構 国立情報学研究所(所長:喜連川優)、人間文化研究機構 国文学研究資料館(館長:ロバート・キャンベル)は、「日本文化とAIシンポジウム2019 ~AIがくずし字を読む時代がやってきた~」(参加無料)を11月11日(月)に開催いたします。このシンポジウムでは、AI(人工知能)を活用してくずし字を読み解く研究の過去・現在から未来までを議論するとともに、世界に広がるくずし字研究の最前線をご紹介します。
 このたび、本シンポジウムのウェブサイトを開設し、参加申込の受付を開始いたしました。多くの皆さまのご参加をお待ちしております。


 日本では、古典籍・古文書・古記録などの過去の資料(史料)が千年以上も大切に受け継がれており、数億点規模という、世界でも稀にみる大量の資料が現存しています。その多くが「くずし字」で書かれておりますが、現代のほとんどの日本人は「くずし字」で書かれた過去の資料を読めなくなっており、大量のくずし字をどう読み解くかが喫緊の重要な課題となっています。
 そこで、ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター、国立情報学研究所、国文学研究資料館は、AI(人工知能)を活用してくずし字を読み解く研究の、過去・現在から未来までを議論し、世界に広がるくずし字研究の最前線をご紹介するシンポジウム「日本文化とAIシンポジウム2019」を開催いたします。
 AIに関する多数のコンペティションで世界的に注目を集めているKaggle[1]では、10月14日(月)まで「くずし字認識:千年に及ぶ日本の文字文化への扉を開く」と題するコンペを開催中です。本シンポジウムには、このコンペの入賞者も集結し、開発したくずし字認識アルゴリズムを解説する予定です。さらに、木簡からくずし字まで、日本の文字文化の研究に取り組む第一線の研究者をお招きし、研究の最先端をご紹介する講演やデモを行います。
 くずし字を読み解く技術がいまどこまで進んでいるのか、その可能性を体感するまたとない機会です。皆さまのご参加をお待ちしております。

「日本文化とAIシンポジウム2019 ~AIがくずし字を読む時代がやってきた~」

 ←ポスターのダウンロードは左の画像をクリックしてください

【日時】2019年11月11日(月) 9:30受付 10:00開始

【場所】一橋講堂 東京都千代田区一ツ橋2丁目1−2 学術総合センター2F

【参加方法】ウェブサイトから事前申込(参加無料)
      http://codh.rois.ac.jp/symposium/japanese-culture-ai-2019/
      ※シンポジウム登壇者への個別取材も調整いたします。

【プログラム】

10:00-10:10     開会挨拶
         北本 朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
10:10-11:50     セッション1-日本の文字文化とAI
        ◆木簡情報のオープンデータ化と文字画像DB連携の強化
         馬場 基(奈良文化財研究所)
        ◆東京大学史料編纂所における字形データの蓄積経緯と花押データへの展開
         井上 聡(東京大学史料編纂所)
        ◆新たな検索機能提供のための調査研究活動―次世代デジタルライブラリーを中心とした近年の取組紹介―
         青池 亨(国立国会図書館電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室)
        ◆市民参加とAI―「みんなで翻刻」開発者の立場から
         橋本 雄太(国立歴史民俗博物館)
11:50-13:10     休憩
13:10-14:25     基調講演-AIによるくずし字認識の展望
        ◆文字認識研究の過去・現在・未来
         内田 誠一(九州大学大学院システム情報科学研究院)
        ◆過去からの挑戦状-くずし字認識の未来-
         佐々木 孝浩(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)
14:25-14:55     セッション2-くずし字データセット100万文字公開とデジタル人文学研究
        ◆NIJL-NWプロジェクトとくずし字データセット
         山本 和明(国文学研究資料館)
        ◆デジタル人文学研究とAIくずし字認識
         北本 朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
14:55-15:25     講演者によるデモンストレーション
15:25-16:00     セッション3-Kaggleコンペティション
        ◆世界中のアイデアを集めるくずし字コンペの開催
         カラーヌワット・タリン(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
        ◆世界中のAI研究者がくずし字に挑んだ結果
         Alex Lamb(モントリオール大学MILA)ほか(調整中)
16:00-17:40     セッション4-Kaggle授賞式、Kaggle入賞者講演、ディスカッション
         ロバート・キャンベル(国文学研究資料館)
         喜連川 優(国立情報学研究所)
         Kaggle入賞者
17:40-17:45     閉会挨拶

 

【関連プレスリリース】

「くずし字」の認識に世界のAI研究者・技術者が挑戦 ―全世界的コンペティションをKaggleで7月から開催―
https://ds.rois.ac.jp/post-3451/

 

【本件に関する問い合わせ】

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
本部広報室
TEL:03-6402-6214 E-mail:koho@rois.ac.jp

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所
総務部企画課 広報チーム
TEL:03-4212-2164 E-mail:media@nii.ac.jp

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館
古典籍共同研究事業センター 管理係
TEL:050-5533-2988 E-mail:cijinfo@nijl.ac.jp


[1] Kaggle(https://www.kaggle.com/)は、米国に本拠地を置くKaggle社(Google傘下)が運営する、世界最大規模の機械学習コンペティションプラットフォーム。Kaggleのコンペティションでは、(1)企業や研究者が解決したい課題を出題し関連データを提供、(2)世界中のAI研究者・技術者がその課題を解決するアルゴリズム(計算手法)を提出、(3) 提出されたアルゴリズムの性能をランキングして上位入賞者を決定、(4) 上位入賞者はコンペの成果を出題者に提供し賞金を獲得、という流れで研究開発をオープンに進める。
コンペ「くずし字認識:千年に及ぶ日本の文字文化への扉を開く」の進捗状況は下記サイトで随時閲覧できる。
 本コンペのページ(https://www.kaggle.com/c/kuzushiji-recognition
 ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)のウェブサイト(http://codh.rois.ac.jp/competition/kaggle/

2019年8月21日

【プレスリリース】国立極地研究所が所蔵する写真のデジタルアーカイブを公開しました(2019/08/19)

令和元年8月19日

 国立極地研究所が所蔵する写真のデジタルアーカイブを公開しました

8月1日、情報・システム研究機構は同機構の国立極地研究所が所蔵する写真のデジタルアーカイブを公開しました。
https://ads.nipr.ac.jp/image/

 このデジタルアーカイブは、主に国立極地研究所アーカイブ室(以下、アーカイブ室)が所蔵してきた貴重な画像のうち約14,000枚を、情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 極域環境データサイエンスセンター(PEDSC)がアーカイブし、データベース化したものです。画像の内訳は、南極の画像約12,000枚、北極の画像約1,500枚の他、極地研究所の活動に関する写真となり、第1次南極地域観測隊以来の記録写真(行動の記録画像、南極の地形画像等)のほか、北極の動植物や過去の研究プロジェクトに関する記録画像・映像を高画質で閲覧できます。

南極画像例1 動けない宗谷
(1958年1月21日)
南極画像例2 重力測定
(1988年1月14日)
北極画像例1 シープマウンテン
ノースフォーク峠 ユーコン準州 カナダ
(1972年7月10日)
北極画像例2  マーモット
ヘレン湖 バンフ国立公園 アルバータ州 カナダ
(1976年8月24日) 

 

 アーカイブ室は、この他にも多数の写真を所蔵しており、今後もPEDSCと共同してそれらの写真をデータベース化し、順次公開する予定です。
 ※なお、アーカイブ室のウェブサイトで公開されている画像も利用可能です。各ページのコンテンツの利用に当たっては、サイトポリシーをご覧ください。

【本件に関する問い合わせ】

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
本部広報室
TEL:03-6402-6214 E-mail:koho@rois.ac.jp

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立極地研究所 広報室
TEL: 042-512-0655 E-mail: kofositu@nipr.ac.jp