「想定外」のリスク評価
我々が興味を持っているのは,日常の小さな擾乱ではない.小さな擾乱に対しては,制御工学や信頼性工学などのよく知られた方法で対応できるからである.これはレジリエンスの2つの側面のうち,Resistanceの考え方と言える。
一方,東日本大震災など,稀で規模の大きな事象に対しては,Resistanceの考え方だけではうまく対処できない。Resistanceのためのコストが極めて大きくなってしまうからである.例えば,東日本大震災で東北地方を襲った津波に耐えられる高さの防潮堤を建設することは,工学的に可能であったとしても,コスト的には現実的ではないだろう。
経済学者の竹内啓はその著書「偶然とは何か―その積極的意味」において,極めて稀な事象については,起こらないものと仮定し,万が一起きてしまった場合には,その不幸を社会で再分配せよ,と述べている.我々は,ResistanceとRecoveryの戦略をどのように切り分ければよいのか,最適なメタ戦略を考えて行かなければならない。
このサブプロジェクトでは,レジリエントなシステムを構築するために,どれだけのコストをResistanceとRecoveryの準備のために割り当てればよいかのメタ戦略の指標を作ることを目指す。