レジリエントな社会システムの生成
社会システムの秩序形成は,通常国家によってトップダウンに法制度が規定されることによって行われる,とされている。しかし,現代の複雑な社会システムにおいて,より柔軟に想定外の事象に対応するためには,このトップダウンの秩序形成の仮説を見直す必要がある.問題を解決するための最良の知識は当事者のみが有するという認識の下,状況の変化に柔軟に対応可能な,ボトムアップ型のルール形成を取り入れていく必要がある。
我々が着目するのは,近年欧州を中心として重視されつつある,「共同規制(co-regulation)」という概念である.共同規制とは,新しい社会的問題について規制を行う際,当該分野で活動する企業等の自主規制による対応を優先しつつも,そのリスクや不完全性を政府が補完するという,公私の協調的な制度形成手法を指す[18]。
このサブプロジェクトでは,主にサイバーセキュリティやプライバシー保護等の法制度分野について,レジリエントな社会システムを実現するための,共同規制手法を用いたボトムアップ型秩序形成の方法論を構築することを目的とする。